障害のある子は、普通学級に行けないの? 

2018年5月2日

『おそい・はやい・ひくい・たかい』連載
小児科医
山田真

連載2 6  面談で加点による「選考の特例」

小学区制から大学区制への移行で

障害児が高校を受験する際、どんな配慮がされるかということについて、東京の場合をひとつの例としてお話ししてきました。
前号では、「加点制」といってよい「選考の特例」といわれるものが、どうして東京でおこなわれるようになったかをお話ししました。「選考の特例」について、もう一度説明しておきます。
障害児がA高校を第一志望、B高校を第二志望として受験し、A高校の合格点には届かずB高校の合格点は越えているといったケースがあるとします。この場合、ふつうはB高校合格となるわけですが、障害児が住んでいる場所からB高校が遠距離にあるとすると通学が困難です。そこで、A高校合格ということにして障害児に通学の便宜を図るという制度がつくられたのです。
ところが高校の入試制度が大きく変わり、小学区制から大学区制になってしまいました。
大学区制になると志望校は一校にしぼることになり、第一志望、第二志望といったものはなくなってしまいます。
「大学区制へ移行することになって、『選考の特例』がなくなってしまうのはおかしい。これまでの『選考の特例』の趣旨を、大学区制に変わったあともひき継ぐかたちになるよう、都教委(東京都教育委員会)も考えてほしい」とぼくたち連絡協は要求しました。
そこで都教委が考えついたのが、「面談をおこなうことで加点する」という方式でした。都教委がこのかたちの提案をしてきたとき、ぼくたち連絡協はびっくりしました。「そんなことができるのか」と思ったのです。
実際には次のような方法でした。
「障害児が自宅から最も近い高校を受験する場合は、面談をおこない、それに対して加点をする」
これではわかりにくいでしょうね。
簡単にいえば、「障害児は遠くの高校へ通うのは不便で難しい。それで近くの高校へ通えるように便宜を図りたい。そこで自宅からいちばん近い高校を受験する場合には、加点措置をして、その高校へ入りやすくする」ということです。しかし、なにもしないで加点するわけにはいかないので、面談をして加点するということにされました。この場合の面談は、「面接」とはちがってまったく形式的なものです。
面談では、障害児は先生と会いますが、そこで二、三の質問をされて、たとえば一問も答えない、ひとことも言葉を発しないとしても、点数が加点されるのです。

帰国子女に対してと同様の配慮

この加点方式は、これ以前に東京都の高校入試のなかで採用されていました。それは中国からの帰国子女に対してでした。
一九六〇年代から一九七〇年代ごろ、中国からの帰国子女が都立高校へ入学するということがあったのです。
太平洋戦争が終わったとき、中国にも日本人がたくさんいましたが、日本へ帰ることのできない人も多数いました。この人たちが一九六〇年代ごろから日本へ帰ってくるようになり、その子女もともに日本へ移り住むことになりました。これが「中国からの帰国子女」ですが、この人たちは中国で生まれ育った人たちですから、日本語はほとんどできません。この状態で高校入試に臨むと、とても不利です。
中国からの帰国子女は、戦争の犠牲者といえます。日本が無謀な戦争をしたために、中国に残って苦難の生活を送ったわけですから。
それで、中国からの帰国子女に対しては、入試時に配慮をすることになりました。面談をおこない、自動的に二割の加点をするという方法でした。当時、高校入試は一〇〇〇点満点でしたから、二〇〇点が加算されたのです。
この方式を障害児に対しても適用するというのが、都教委の提案でした。ただ、何点加算されるのかは公表できないということです。
ぼくたち連絡協は、こんな「加点方式」など考えたこともなく、都教委の提案に驚きました。そして、この提案を受け入れることにしました。この「選考の特例」は、いまも続いています。
何点加点されるかについては、いまも公表されませんが、この選考の特例が始められた最初の年は、帰国子女の場合と同様、二割の加点だったようです。なぜそんなことがわかったかといいますと、この年ある高校を受験する生徒とその保護者が、その高校の校長先生と会話をしていた際に、校長先生が「二割加点される」といってしまったからです。
二割加点されると、重い知的障害の子どもも全日制への入学が可能になります。実際この年は、知的障害の子どもが何人も全日制に入学しました。
しかし、どうもその翌年からは加点が一割に減らされたようで、この年以後は重い知的障害の子どもの全日制への入学はまれなことになってしまいました。
一割に減ったのは、ある高校の教師が「加点制度はおかしい。入試の公平性を欠く」と都教委に抗議したからだといわれました。
現場の教師たちの多くは、障害児の入学を歓迎しません。成績のよい肢体不自由児などは歓迎されるのですが、知的障害の子どもについては「高校に来るべきではない」と思っているようです。
「高校は、高校の授業についていくことができ、卒業の見込みがあるような子どものみが来るべき」という考え方は適格者主義と呼ばれますが、多くの教師はこの適格者主義を強く信じているのが現状です。ぼくたち連絡協のこれまでの闘いは、適格者主義との闘いだったといってもよいでしょう。

●連載26 面談で加点による「選考の特例」
(連載1~25は、『お・は』No.74~No.98に掲載されています)
プロフィール
やまだ・まこと
小児科医。八王子中央診療所所長。「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表。本誌編集協力人。