
2025年12月10日初版
高桑明 著
タイトルリードに「68歳からの気ままにゆっくりエコロジカルな僕の旅日記」とある本書は、高齢期の生き方ガイドでもある。
筆者は過去、コース環境などが整備されているヨーロッパでのサイクリングを経験している。しかし、高齢期に伴う体の変化(これを通常「衰え」という)に合わせて、日本にそのコースを求めた。
簡単には諦めない。こちらがダメなら、これではどうだ? と前に進む。
こうした著者の生き方は、高齢期において、肉体と精神のバランスがいかに大切かをも表している。
人としての「体幹」を感じる。
高齢期は、肉体の衰えに支配されがちだが、実は精神がその衰えを加速させることがあるのではないか。
著者の日記からそんなことを思った。
体幹を保つためには、自分の過去や体裁や常識に縛られず、他者の目にも脅かされず、「自分」を大切にすること。
今を生きる老若男女に、長老から送られる大切なメッセージのようでもある。それを著者は、言葉で伝えずに、体現している。
本書の写真もすべて著者が単身で行ったサイクリングの旅の途中で撮られたものである。この撮影も「挑戦」。
正直、プロの作品ではないので、編集上は難点も感じたが、著者の写真群は、技術的な出来映えを超越する。
著者・高桑明の体と心は、常にバランスよく保たれ、それは自転車を走らせるときに必要な力と重なっている。
自分の日常もこうありたい、と思うような旅日記なのだ。
著者の後姿を追いながらサイクリングをしているような気分にもなった。
走ることを諦めない、淡々と自分なりの目的と目標をもち、その道に合わせて工夫と忍耐をして進む。
失敗も苦労も多く、困難に負けそうなときもある。
しかし、心を乱すことなく、黙々と進む。
技術者であった著者が、現在国宝に指定された熊本県の「通潤橋」に感動している様が、本書から読みとれ読者にも伝わるだろう。
そして、サイクリングに限らず、できそうでできなかった事を「やってみようかな」と思わせてくる力が本書にはある。
「昭和」時代を生きた企業人、とくに男性には「令和」の風は強くあたり厳しい。でも、どんな時代にあっても、「自分らしくある」著者の姿勢は読者へのエールになっている。
定価(本体価格1,500円+消費税)
A5判/144頁/ISBN978-4-88049-345-9
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