Q.3 2018年、麻しんはどれくらい流行ってるの?

2018年6月21日

子育てQ&A

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Q 2018年、麻しんはどれくらい流行ってるの?

 

A 青野典子(「ワクチントーク全国」)からのお返事

 

流行のはじまりは……

国立感染症研究所の感染症発生動向調査(IDWR)2018年第16週(2018年4月25日現在)に「注目すべき感染症」として麻しんをとりあげています。(https://www.niid.go.jp/niid/ja/measles-m/measles-idwrc/8028-idwrc-1816.html)。そこには次のことが記されていました。

 

2018年3月20日沖縄県内で海外からの旅行客の一人が麻しんと診断。4月25日までに86例。検査診断例が73例(麻しん:46例、修飾麻しん27例)。

ワクチン接種歴は、接種歴なしが20例、不明が46例、1回が11例、2回が9例。2回接種歴ありの9例のうち6例は軽症で非典型的な麻しん(修飾麻しん)であった。接種歴なしの20例は全例が典型的な麻しんであった(赤字は筆者)。

全報告のうち、22症例から検出された麻しんウイルスに関して、その遺伝子型の内訳はD8型19例、B3型3例であった。渡航歴がある10例の渡航先は、D8型はタイ7例、ネパール1例、B3型はバングラデシュ1例、フィリピン1例であった。

 

沖縄県での流行は?

沖縄県における麻しん患者(検査診断例)発生状況が県HPに載っています(http://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/eiken/kikaku/kansenjouhou/documents/masin300528.pdf)。

2018.5.28時点で数えてみると、検査診断例100例(麻しん63例、修飾麻しん34例、調査中2例、ワクチン株由来1例)。ワクチンの接種歴は、接種歴なし18例(すべて麻しん)、不明47例(麻しん30例、修飾麻しん17例)、1回接種19例(麻しん9例、修飾麻しん10例)、2回接種9例(麻しん4例、修飾麻しん5例)、回数不明3例(麻しん2例、修飾麻しん1例)、感染者への接触5日後に3回目接種1例(修飾麻しん)です。

(沖縄県では5月11日患者を最後に発症はなく、6月11日終息宣言を出しています。)

 

例年より流行っている?

2012年~2018年(第1~17週)までのグラフがあったので紹介します(http://www.niid.go.jp/niid//images/idsc/disease/measles/2018pdf/meas18-17.pdf)。

4月25日現在の86例から5月2日現在では102例に増えています。このうち、接種歴なしが21例、不明が56例、1回が16例、2回が9例です。年齢は0-9歳11人、10-19歳13人、20-29歳21人、30-39歳38人、40-49歳16人、50歳~3人。

2018年(第1~22週)では、167例になり、接種歴なし36例、不明76例、1回接種37例、2回接種18例でした。年齢は20歳以上が71%です(http://www.niid.go.jp/niid//images/idsc/disease/measles/2018pdf/meas18-22.pdf)。

沖縄で多くの感染者が出ましたが、全体数は例年にくらべ、とくに多い数ではありません。

 

なぜ、国は2回接種をすすめるか?

上記「注目すべき感染症」の赤字のところが、2回接種を勧める根拠とされているのでしょう。しかし、ここでは1回接種をとりあげていませんので、1回接種の麻しんと修飾麻しんの割合がわかりません。接種歴なしの人が典型的な麻しんだとしても、死亡や肺炎・脳炎の重篤な報告はありません。

沖縄県の報告でも「接種歴なし」がはっきりしている人は全員典型的な麻しんでした。「接種歴あり」では1回接種も2回接種も感染した人の約半数は典型的な麻しんでした。

1回接種より2回接種の患者数が少ないことが2回接種を強力にすすめる理由になるでしょうか。1回接種も2回接種もかかったときは半数ぐらいが軽くすんだともいえます。いずれも例数が少ないので判断しかねます。

 

遺伝子型からわかることって?

報道からは沖縄で発症したケースがすべてのスタートで、次々拡大していったかのように感じられました。たしかに沖縄で多くの患者が出ましたが、例年同様、複数の国から複数の遺伝子型がもちこまれていて、そのまわりの人が接触して感染発病していることがわかります。

 

予防接種はどうする?

データを見ると、例年より多い患者数ではないこと、1回接種者も2回接種者も感染していること、重篤な患者報告がないこと、などから、判断材料が新たに出たとはいえないと思います。

日本は麻しん根絶宣言が出ているが、輸入麻しんはあること、自然感染から免疫をつけることはほとんど期待できないこと、なにより社会的に問題にされていることから、ワクチンを接種して軽く免疫をつけておくと考えるのがひとつ。感染する人が少ないこと、幸い重症者は近年報告されていないこと、などから接種しないというのも選択肢のひとつと思います。

予防接種は義務ではなく受けるか受けないか選択することが予防接種法で認められています。一人ひとりの判断が認められる社会にしましょう。(2018.6.18)