2019年6月10日刊行
石川憲彦 著
自然治癒力と「場の療法」の可能性
半世紀近い臨床経験の中で立ち会った「奇跡」の物語。
診療室で出会った子どもたちが還暦を迎える年代になり、治療の本質を確信した筆者。
「育ち」をキーワードに精神医学から自然治癒力を問う渾身の一冊。シリーズ基礎完結編。
定価(本体価格3,700円+消費税)
四六判/344ページ/ISBN978-4-88049-492-0
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目次
「こころ学」シリーズによせて
プロローグ
自然治癒力の再発見に向けて
23 「直り」を基本で支える「育ち」
25 人工知能(AI)やバイオ・テクノロジー(BT)の登場で
27 児童精神科の受診者数を押し上げている現象
29 産業構造の変化によって
31 対症療法から根治療法へ
32 善意と対症療法の乱用
35 出生前診断は究極の対症療法
36 同じ穴のムジナ
38 「登校は無理」という三人のお母さん
40 洗脳する側に組み込まれていく専門家たち
42 今の親心の特徴
44 尊敬から外部評価へ
46 人間の生物学的な基礎に遡って
I 発達神話の生成─小児科学の変節と精神科診断の変化
「天」の変化
51 子どもは小さな大人ではない
53 森永ヒ素ミルク事件
55 母子健康手帳の示す成長と発達
58 なにを基準にして数値化していくのか
59 異質で多様な条件が関与する成長
61 成長の終点と出発点
63 先天的、後天的の「天」とはなにか?
67 「天」の揺らぎと生命の価値
70 科学的中立性の危うさ
親心をとらえた発達神話
73 敗戦後に求められたもの
76 量から質への転換の時代
77 生存競争に打ち勝つ「早く!」「ちゃんと!」「きちんと!」
78 変わる理想の人間像
80 発達研究による治療予防の広がり
82 医学の最重要課題になった「成長・発達」
精神医学の立ち遅れ
84 二人の先駆者
87 精神科で最初の発達論
89 フロイトの考えた精神構造
92 葛藤と防衛
93 口唇期の解釈
96 肛門期の解釈
97 男根期の解釈
98 虚と実を取りちがえたフロイト
101 「天」に優先する自己都合
診断基準とはなにか?
104 納得のできる診断基準を求めて
107 多軸評価という考え方
108 『DSM −5』で大きく変わったこと
113 再び多軸診断について
115 環境を評価する診断
117 治療の可能性が広がるとき
発達神話の誕生
119 発達が変える診断
121 発達の求める医学変化
123 身体医学と精神医学の接近
126 異次元の世界へ導く大転換
II 精神発達の虚と実─実体からイメージを育むブラックボックス
私たちは「赤」をわかり合えるのか?
131 虚と実の逆転
132 狼少年に心惹かれた人たち
134 なぜ野生生活をしていると、人間に戻れないのか?
135 ブラックボックス
137 イメージとはなにか?
139 入力―イメージ―出力
143 可視化できること、できないこと
人は揺れながら立つ
146 運動とはなにか?
147 運動と意識との関係
149 随意運動
152 無意識の運動
154 筋肉と反射
156 シナプスの反射と反応
158 揺れの矯正はほどよいバランスから
161 反応の抑制はなぜ必要か?
人が歩くまで
164 人間を有利にした条件
166 進化と発達のパラドックス
167 原始反射
169 脳内の回路の完成と歩行準備
171 首の座り・寝返り・這い這い
173 大脳皮質の成熟と洗練──独り立ち、歩行、走る
175 生き物の特性
「感覚」とはなにか?
177 しゃべらなかった狼少年
179 臨界期を証明することの難しさ
181 イメージは独立して存在できるのか
183 脳内操作によって変形する「感覚」
185 感覚共有の難しさ
186 胎児の目
188 胎児の耳、鼻
190 生まれてすぐの赤ちゃんの力
191 体性感覚
193 深部知覚の発達
195 情報量とイメージの質の差
「認知」とはなにか?
199 統一見解のない「認知」
201 人間だけがもつ「予期不安」
203 脳イコール精神という図式を疑う
205 細分化されていく発達研究
206 可能になった「観察」がもたらすこと
208 認知心理学ヘの流れ
209 嘘とも真ともいえないイメージの世界
III 科学の限界と生き物の広がり─認知科学と発達学のイメージ
「発達」に注目した人たち
215 カナー・アスペルガー・エリクソンの発達論
217 心理療法家・エリクソンの発達論
220 児童精神科医・カナーの発達論
223 小児科医・アスペルガーの発達論
225 知能テストの開発と頻用
228 児童精神医学の大家の「笑い話」
認知行動療法の基礎となったこと
231 賞と罰の学習理論
233 認知心理学への軌道修正
234 子どもの認知構造
236 「シェマ」をめぐる用語
238 ピアジェの四つの発達段階
240 認知発達論と心理療法
242 「シェマ」のとらえ方
心理療法の限界
245 治療を評価する基準
246 みえない発達の目標
249 今、生きる意味を問うとしたら
251 身体を器とする考え方
生命の四〇億年から見直す
254 発生学からの推論
256 初期の細胞と永遠の生命
259 生物学的な関係の基礎
261 神経系、血管を利用した連絡網
263 進化と臓器形成
265 生命にとって必要だった情報
267 自然に育つほうが楽に決まっている
人間の脳ができあがるまで
269 初期の生物から人間への進化
275 胎内から八歳までつづく「ミエリン化」
278 「這えば立て」と願った理由
280 コミュニケーションの変化
282 人間の脳と馬の蹄
283 脳の大きさの限界
286 機械が未来を切り開き発展させる
新しい医療の方向性
289 自閉症の愛情不足説・脳障害説・個性説
290 同時期に「自閉症」に魅せられた三人
293 関係の見直し
296 分断から統合へ
エピローグ
生きる「場」が生む奇跡
301 娑婆で生きていこうとすれば
303 どちらが、この子の人生は豊かなんだろうか
304 陽気で楽天的な集団の影響
306 現在の医療に欠けていること
309 非日常と遊びが生んだ内面の変化
310 突然生まれてはじめて筆をもって
311 専門家のルールには当てはまらないこと
313 外部評価と自尊感情
315 もう一つの奇跡
320 奇跡を生むRespectし合える場
全章をふり返って
322 「無駄」「邪魔」な存在
324 認知とイメージ
325 イメージの欠点
328 AIは精神医学を変えていくのか
330 「みんなに伝えて、さようなら」
334 生死のイメージを超えて
335 「場の療法」の希望
340 参考文献