「ワクチントーク全国」事務局長/「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」編集協力人
青野典子
最終回 感染の可能性、重症化の割合、予防接種後に起きうる副反応を考えて
こどもへの新型コロナワクチン
この連載は判断材料のひとつになることを願い、厚生労働省や国立感染症研究所 感染症疫学センター(*0)などのHPに公開されている情報を可能なかぎり整理して伝えてきました。今回が〈ちいさい・おおきい・よわい・つよい〉本誌掲載の最終になります。
最初に新型コロナワクチンの副反応疑い報告、とくに5歳~11歳のこどもへのワクチン接種についてみていきたいと思います。
12歳以上で新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例は、2022年7月10日までにコミナティ筋注(ファイザー)1616件(100万回あたり7.4件)、スパイクバックス筋注(モデルナ・ジャパン)162件(100万回あたり2.5件)、バキスゼブリア筋注(アストラゼネカ)1件(100万回あたり8.5件)、5~11歳対象のコミナティ筋注5-11歳用は1件(100万回あたり0.4件)の報告です(*1)。インフルエンザワクチンと比較すると、インフルエンザワクチン接種後の死亡報告は年間数件から10件程度です。
こども用新型コロナワクチンの副反応疑い報告が公表されています(*2)。
副反応疑い報告症例数は、医療機関からの報告111件、製造販売業者からの報告128件です(*3)。医療機関の報告と製造販売業者からの報告は重なりがありますが、はっきりとわかりませんので製造販売業者からの報告より症例数を数えました。
・心筋炎 8件、心膜炎 3件(あわせて9人)
・薬効欠如 24件(取り下げふくまない)
・運動障害(歩行困難、眼球運動障害など)6件
・血管迷走神経反射(失神寸前)10件
・無菌性髄膜炎 2件(うち1件は血管炎併記)
・アナフィラキシー 8件
・血小板減少性紫斑病 1件
・ギランバレー症候群 1件
・ほか(発熱、けいれん、紅斑、胃腸障害、肝機能障害など)
報告時点で死亡1人、未回復16人です。
新型コロナワクチンは「予防接種によって健康被害が生じ、医療機関での治療が必要になったり、障害が残ったりした場合に、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられます」という救済制度があります。しかし、死亡報告だけでも、前記したようにいままでのワクチンとは比べ物にならない多さです。
2022年7月28日までに「疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会」で審議された数は、進達受理件数(申請を受けつけた数)3694件に対し、認定910件、否認定67件、保留24件で、審議会にかけられたのは27%程度です。認定されているのは、ほとんどがアナフィラキシーショックなどで医療費・医療手当の支給です。死亡で審議会にかけられているのは16件でそのうちの1件(91歳女)の認定があるのみで、15件は保留です。2693人は7月時点では審議されていません。申請された方は氷山の一角ですが、この審議が進み認定されることにより副作用の実態がわかってくると思います。
日本脳炎、BCG
新型コロナワクチン情報以外を少し書きます。日本では感染者がほぼいない日本脳炎ですが、日本脳炎ワクチンは全国で接種されています。2022年7月の審議会の資料より9年間の副反応疑い報告では、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)26件、脳炎・脳症30件、血小板減少性紫斑病18件、アナフィラキシー34件、けいれん82件の報告があります。
2022年の4月と6月の審議会でADEMは認定3件、急性脳症は認定2件あります。1件は障害児養育年金支給、1件は死亡です。
また、乳児の結核性髄膜炎や粟粒(ぞくりゅう)結核に効果があるとして0歳で接種しているBCGは、9年間の副反応疑い報告で、全身播種性BCG感染症18件、BCG骨炎・骨髄炎80件、皮膚結核様病変59件、髄膜炎(BCGによる)1件、アナフィラキシー11件、化膿性リンパ節炎120件です。
2022年の2月と6月の審議会で、BCG骨髄炎2件、BCG肉芽腫1件、リンパ節炎2件、ケロイド2件が認定されています。疾病・障害認定審査会は新型コロナワクチン以外年に5~6回開催され、BCGは2021年に21件認定されています。BCG骨髄炎は6件です。1件はBCG髄膜炎で障害児養育年金支給です。
0~4歳の結核性髄膜炎・粟粒結核は年に0~3人程度です。
予防接種にはメリットとデメリットがあることは理解していても、新型コロナ感染症の流行以降、重症になっても入院できないというような報道が続き、副反応疑い報告については具体的に知る機会は少ないため、接種するかしないか情報を得て自分で判断するのは難しいといえます。それでも感染の可能性と重症になる割合、予防接種後に起きうる副反応を考え、一人ひとりが判断していく必要がありそうです。
*0 〈ち・お〉本誌で「感染症情報センター」としていましたが、改称されていたため、訂正いたします。
*1 厚生労働省HP「2022年8月5日 第82回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」、資料1-3-1、1-3-2、1-3-3、1-3-4より。
*2 *1資料1-7より。新型コロナワクチン(コミナティ筋注5-11歳用)副反応疑い報告症例一覧(2022年2月21日~7月22日の5か月間に報告のあったもの)。推定接種回数269万2810回(1回目2回目合計)。
*3 128件のうち、1件薬効欠如ケースで取り下げがあります。*1資料1-8では報告数125件となっていましたので、さらに2件の取り下げがあったと思われます。
本連載は、本誌とHP「連載を読む」の同時掲載です。
以下は、新型コロナワクチン接種後の副反応疑い報告に関して、2022年10月13日時点での審議の進捗や認定数、死亡報告数のデータを青野さんに補足いただきました。ホームページのみでの掲載となりますことご了承ください。(編集部)
死亡認定、合計3人に
9月9日の疾病・障害認定審査会での審議の結果は、認定10件、否認2件、保留5件。うち、死亡認定は2件(91歳男/間質性肺炎急性増悪、72歳男/血小板減少性紫斑病・脳出血)、死亡否認1件、死亡保留2件で、これまでに死亡で認定された人は合計3人、否認は1人となりました。
9月22日の疾病・障害認定審査会の審議では、認定65件、否認13件、保留6件となり、これまでの進達受理件数は4424件、うち認定985件、否認82件、保留27件です。
10月7日時点の死亡報告数
10月7日の副反応検討部会によると、新型コロナワクチン接種後の12歳以上の死亡報告は、コミナティ1677件(9月4日までに1667件、9月23日までに+10件)、スパイクバックス197件(9月4日までに184件、9月23日までに+13件)、バキスゼブリア1件(9月4日までに1件)、コミナティ5‐11歳 2件(9月4日までに1件、9月29日までに1件)。
こども用の新型コロナワクチン(コミナティ筋注5-11歳用)の副反応疑い報告 (2022年2月21日~9月23日)は、医療機関より122件、製造販売業者より142件(うち1件取り下げあり)あります。
前回 連載15 新型コロナワクチン、副反応検討部会の資料から見えること
あおの・のりこ
1952年新潟県生まれ。保育士。予防接種についてみなで勉強し、 語りあい、行動する市民団体「ワクチントーク全国」事務局長。「ち・お」編集協力人。著書に、「ち・お」117号『予防接種は迷って、悩んでもいいんだよ。』(共著、小社刊)など。
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