予防接種、基本から

2020年4月9日

「ワクチントーク全国」事務局長/「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」編集協力人
青野典子

連載12 副反応の疑い、報告数にあがらないことも

症状を真摯に見ていない現状
 私は「予防接種情報」を伝えるときに、厚生労働省の「副反応検討部会」の資料をよく利用します(厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(厚労省HP) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_284075.html)。
 資料に掲載された数字は、厚労省に報告としてあがってきたものだけですが、最低でもこれだけはあるということはいえると思います。
 「最低でも」というには理由があります。たとえば、ワクチンの同時接種後、後遺症が残ったケースで、保護者へは医師が厚労省へ報告を出すと伝えていましたが、後日保護者が保護者用報告書(*)を出したとき医師が提出していないことがわかり、病院側は慌てて提出したということもありました。

 また、「厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会」と「薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会」の各委員に出された「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の審議に関する意見書」(2020年1月17日)からも現状の一端がわかります。
 意見書は弁護団のHPで読むことができます(HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団 https://www.hpv-yakugai.net/)。
 副反応検討部会の審議資料は、一定期間の副反応疑い報告数や報告概要をまとめた一覧表が主であり、死亡ないし重症症例とされた報告例についてのみ、症状経過などの個別資料が提出されるあつかいとされています。
 被害者は、2016年夏4地裁(東京・名古屋・大阪・福岡)に提訴し、現在131人が原告となっています。
 HPVワクチンの原告はみなさん重い症状に苦しんでいます。しかし、131人のうち重症症例とされて症状経過などの資料が提出されていたのはわずか19人だったとのことです。それ以外の原告は副反応疑い報告一覧表のなかの一例として記載されただけで、まったく具体的には検討されていないとのことです。
 さらに131人のうち17人は厚労省に報告さえあげられていないようです。
 意見書は、「(いま求められていることは)被害者の被害実態を適切に把握することをはじめとして、HPVワクチンの高い危険性を示す情報を十分に検討することです。その上で、国民に対する情報提供のあり方を含めて適切な審議を行うことが求められているのです。」とまとめています。
 実態把握の難しさは医療現場の問題からもわかります。HPVワクチン接種後の症状は、失神・意識消失、発熱、けいれん、頭痛、全身疼痛、筋力低下をはじめとする神経・筋症状が多く見られ、一人で何十件もの症状をもつ例もあります。

 多様な症状を訴える少女に「本当にそうなの? 演技うまいね」、あるいは保護者に「私は、子宮頸がんワクチンによるものとは全く思っていませんし、ありえません。症状は精神的なものによるもので、娘さんが嘘をついているだけです」というような言葉を投げつけていることが、弁護団による原告調査結果より明らかになっています。
 最初から接種後に起きた症状を真摯に見ることをしていないのです。

 

HPVワクチンのこれまで・これから
 HPVワクチンが「子宮頸がんワクチン」としてスタートしたのは2010年11月からです。当時「がんを予防するワクチンってなに?」と思い、講演会を企画しました。
 HPV(ヒトパピローマウイルス)は型が多く、そのなかの15種類の型が子宮頸がんの患者から見つかっていました。そのうちの2種類の型をふくむワクチンが開発されましたが、残りの13種類の型がありますから検診は避けられないということになります。
 ワクチンには少なからず副作用がありますから、検診が必要で検診の効果が大きいなら検診で対策するほうがよいと確信し講演の内容をブックレットにまとめました(『必要ですか? 子宮頸がんワクチン 増補改訂版』ワクチントーク全国編集、日本消費者連盟発行 http://nishoren.net/new-information/2094/)。
 心配していた副作用は、いままでに聞いたこともない多種にわたる重度の症状が出現していました。

 任意接種のまま公費負担をするしくみをつくりスタートし、2013年4月に定期接種に組みこみました。2013年3月には被害の大きさを訴え「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」が結成され大きく報道されていたにもかかわらず、強引に定期接種にしたわけですが、厚労省は2013年6月14日にHPVワクチンの積極的勧奨を差し控えることを勧告する通知を出して、現在も続いています(「ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について(勧告)」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034kbt-att/2r98520000034kn5_2.pdf(厚労省HP))。
 なにかあったときには救済制度があります、といって勧めていますが、現実はこのように副反応疑い報告さえあがらないことも多くあります。「詳細がわからないため因果関係不明」などと報告したあとのその後の報告も少ないです。
 2020年1月現在、HPVワクチン接種を再開しようという動きがありますが、接種後に起きた事実をきちんと検討し、被害救済を先にしなければいけません。

 

* 保護者用報告書……予防接種を受けた人に副反応を疑われる症状があるとき、医師は厚労省に報告しなければならず、保護者も市町村に報告することができる(任意接種の場合、保護者は医薬品医療機器総合機構〔PMDA〕の救済制度相談窓口へ連絡する)。
※本連載は、「ち・お」本誌とHPの同時掲載です。

撮影 小山田喜佐

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あおの・のりこ
1952年新潟県生まれ。保育士。予防接種についてみなで勉強し、 語りあい、行動する市民団体「ワクチントーク全国」事務局長。「ち・お」編集協力人。著書に、「ち・お」117号『予防接種は迷って、悩んでもいいんだよ。』(共著、小社刊)など。

 

 


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