予防接種、基本から

2020年10月25日

「ワクチントーク全国」事務局長/「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」編集協力人
青野典子

連載13 接種回数にとらわれすぎないで

新型コロナの流行のなかで
 新型コロナウイルス感染症が報道されはじめてから10ヶ月ほどたち、体調が悪くなったときに病院へ行くか行かないかの判断が変わってきたように思います。
 発熱だけだったら、2~3日様子を見ようという人も増えてきています。小さいこどもは急に気温があがると、その前後に発熱して、体の調整をしているようなときもあります。
 病院へ行ったとしても「○○かもしれないから念のため薬を処方しておきましょう」という感じで、医者も発熱だけで診断することはできないことは、うすうす感じていたのだと思います。
 病院側も、インフルエンザかアデノウイルス(いわゆる「風邪」の症状を起こすウイルス)か抗体を調べても、対処できることは同じだから検査しなくていいといいはじめています。

 しかし、予防接種だけは別です。病院へ足を運ばなくなった保護者に必死で呼びかけています。予防接種こそ元気なこどもが病院へ行くことになります。
 予防接種があるような病気で現在大流行はありません。
 新型コロナをはじめ、ほかの病気にかかるかもしれないからと恐れているだけでなく、予防接種について必要性・安全性・有効性について考えるよい機会としてはどうでしょうか。

 

検討中の混合ワクチン
 今回は接種回数についてとりあげます。2019年12月25日開催の「第22回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会」の資料1に「ワクチンの研究開発について(*)」が掲載されています。
 資料1は「新たに開発しているワクチン」と、「接種回数の検討について」がまとめられています。接種回数についての主な点は「被接種者の負担軽減のために」=「混合ワクチンを開発しましょう」ということです。

 2歳までに接種する回数は定期接種だけで21~22回です。
 現在開発がすすめられているのは、MR(麻しん・風しん)をふくむ混合ワクチン(+おたふくかぜ)、四種混合(=DPT-IPV、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)をふくむ混合ワクチン(+ヒブ〔インフルエンザ菌b型・Hib〕あるいは、+ヒブ+B型肝炎)ということです。
 四種混合(DPT-IPV)と、ヒブ(Hib)やB型肝炎は現在、接種回数やおすすめ接種年齢がちがいます。混合した場合、多い接種回数、早い接種時期にあわせることになるのでしょうか?
 混合することにより接種回数が減ることはよいと思われますが、流行がなく必要度が低いと考えられるワクチンもふくめて接種するしかないということになります。
 現在も破傷風だけを接種したいと思っても、ワクチンは存在するのに、接種してくれるところが見つからないという状況です。多くの種類を入れることによる安全性も不安が残ります。安全性については、同時接種が増えたこともあり、現在も原因ワクチンがわかりにくくなっています。

 

諸外国と比較すると
 「日本と諸外国における接種回数の比較」が資料1の23ページに載っています。接種回数にちがいがあるワクチンはいくつかありますが、審議会でとりあげているのは「小児用肺炎球菌ワクチン(PCV13)」です。
 日本は現在4回接種(初回3回+追加1回)しています。アメリカも4回、イギリスは3回、WHO推奨は生後6週より3回です。
 WHOは「3回+0回か2回+1回で、3回接種の場合、4週以上間隔をあけ、追加1回接種の場合、追加1回を8週以上あける」としています。多くの国がこれを採用しています。
 また、イギリスにおいては、2回接種の有効性も検討されています。2回接種(1回+1回)、3回接種(2回+1回)ともに、ワクチンにふくまれる型(13の型が入っている)については、「3」の型をのぞいて「97%以上の被験者で有効な抗体濃度以上の抗体価を認めた」とあります。

 そもそも常在菌にワクチンが必要かという議論もありますが、少なくとも接種回数は減らしてよさそうです。日本は生後2ヶ月から7ヶ月は合計4回接種をすすめ、生後7ケ月以降は接種回数を減らしてすすめています。
 小児肺炎球菌の型(血清型)は93種類あるといわれ、ワクチンにある型のほとんどは感染者が減っていますが、その他の型が増えてきていることも報告されています。
 その他、小児用肺炎球菌と同時に導入されたヒブワクチンは、日本は4回ですが、WHOとアメリカは3~4回としています。いま中止されているHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、日本は3回ですが、WHOとイギリスは2回で、アメリカは2~3回となっています。
 接種することを選んだ場合も、接種回数にとらわれすぎず、体調にあわせゆっくりすすめてよさそうです。

 

*ワクチンの研究開発について……
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000580437.pdf(厚生労働省HP)
※本連載は、「ち・お」本誌とHPの同時掲載です。

撮影 新津 岳洋

前回 連載12 副反応の疑い、報告数にあがらないことも

あおの・のりこ
1952年新潟県生まれ。保育士。予防接種についてみなで勉強し、 語りあい、行動する市民団体「ワクチントーク全国」事務局長。「ち・お」編集協力人。著書に、「ち・お」117号『予防接種は迷って、悩んでもいいんだよ。』(共著、小社刊)など。

 

 


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