予防接種、基本から

2019年4月18日

予防接種、基本から
保育士・「ワクチントーク全国」事務局長
青野典子

連載8 BCCワクチン……すべての赤ちゃんに必要?

たび重なる制度変更を経て

私がかかわっている「ワクチントーク全国」は1990年に結成されました(当時、予防接種はこどもが対象でしたから「子どものためのワクチントーク全国」という名称)。「ワクチントーク全国」の結成集会で、黒部信一医師が結核対策の問題点とともに小・中学生への再接種が必要ないということをくわしく報告しています。
実際に小・中学生への再接種が廃止されたのは、WHOの勧告を受けた2003年です。13年後のことでした。
2005年4月、生後6ヶ月までのBCG直接接種方式が採用されました。それまで、ツ反(ツベルクリン反応)で結核菌に感染しているかどうかを調べ、陰性だった人にBCGを接種していましたが、日本で生後6ヶ月までに結核にかかる人はほとんどいないことから、ツ反をやめてBCGを直接接種することになりました。ツ反の精度も問題とされていました。また、2006年 に結核予防法が廃止され、BCGは予防接種法でおこなうことになりました。
あとで述べるようなBCGの重い副作用の報告が増えたことと、生後6ヶ月までに受けるとされる予防接種が急増したことから、2013年から接種対象は生後1歳までに変更されました。
そして現在にいたるわけですが、次にまとめた小児結核の患者数や重篤な副反応(疑い)報告をみていくと、BCGワクチンをこのまま接種しつづけることに疑問を抱かざるをえません。

増えつづける重篤な副反応(疑い)報告

同一年数の比較となりませんが、報告制度・対象年齢の変更にあわせ、重篤な副反応(疑い)報告がどのように変化してきたのか、1 骨炎・骨髄炎、2 全身性播種性BCG感染症、3 皮膚結核(皮膚結核・結核疹)について比較検討します。
➀予防接種後副反応(疑い)報告(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/syukeihou.html(*1))が開始された1994年10月~2005年3月までの10年半
②生後6ヶ月までに接種することになった2005年4月~2013年3月までの8年
③生後1歳までに接種することになり、また、予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_284075.html)という制度が始まった2013年4月~2018年10月までの5年半(*2)
1 骨炎・骨髄炎 (結核菌が骨や骨髄に感染して起こる炎症)
①  9例(年平均 約0.9例)
②  36例(年平均 4.5例)
③  46例(年平均 約8.4例)
2 全身性播種性BCG感染症 (BCGによってかかる進行性の全身性結核感染症)
① 4例(年平均 約0.4例)
② 7例(年平均 約0.9例)
③ 10例(年平均 約1.8例)
3 皮膚結核(結核菌によって起こる皮膚病)
① 15例(年平均 約1.4例)
② 181例(年平均 約22.6例)
③ 34例(年平均 約6.2例)
厚労省のHPで公開されている副反応(疑い)報告では、「1 骨炎・骨髄炎」と「2 全身性播種性BCG感染症」の報告は①②③の順に大幅に増えています。「3 皮膚結核」は②の生後6ヶ月までの接種とされたときは非常に多くの報告がありましたが、1歳までの接種にしてからの報告は減りました。しかし、①のころの4倍超の報告はあります。
上記の1~3の例以外にも、BCG接種後の後遺症として③の副反応検討部会に報告されたものは、次のものなどがあげられます。
7ヶ月男・潰瘍切除
5ヶ月女・意識変容・発熱・脳症・ほか(脳性麻痺・てんかん)
男・骨結核(背中曲がり)
1歳 男・骨結核(病的骨折)
7ヶ月男・結核性髄膜炎(歩行障害、視力障害)
1歳 女・骨結核(骨破壊が強く成長障害の可能性あり)
このような報告例のうち、2013年~2018年12月の6年間に、BCGワクチン接種後副反応として認定された数(疾病・障害認定審査会)は(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-shippei_127696.html)181人(同時接種8人ふくむ)、否認は4人。
そのうち骨炎・骨髄炎で認定されたのは33人(年平均5.5人)。「1 骨炎・骨髄炎 ③」の報告数より少ないもののBCGの副作用として因果関係がはっきりしているので認定されていると思います。実際この6年間に認定されたなかで41.6%はBCGワクチンの副作用になっています。
*1 予防接種後副反応(疑い)報告書は2013年3月で終了し、4月からは副反応検討部会に報告されるようになりました。
*2 ③のデータは以下から参照できます(https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000469025.pdf)。
* ここまでのリンクはすべて、厚生労働省ホームページ。

小児結核の患者数報告は

では現在、小児結核の患者はどのくらい報告されているのでしょう。新たな小児結核患者数が0~1人の県の数は、表1のとおり、毎年30県を超えるくらいとなっています。
これらの小児結核患者(0~14歳)で、BCC接種者の数、未接種者の数を示したものが表2、また、0~4歳の重篤な小児結核者数をまとめたものが表3です。

BCGは重篤小児結核を防ぐことを目的におこなわれています。重篤小児結核を防ぐことはもちろん大事なことですが、重篤な副反応報告の増加とあわせて考えると、BCGワクチンをすべての赤ちゃんに接種するという現在の制度を見直す必要があるといえるのではないでしょうか。

(次回は7月下旬更新予定)

前回 連載7 Hib・肺炎球菌ワクチンで、知っておきたいこと
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あおの・のりこ
1952年新潟県生まれ。保育士。予防接種についてみなで勉強し、 語りあい、行動する市民団体「ワクチントーク全国」事務局長。「ち・お」編集協力人。著書に、「ち・お」117号『予防接種は迷って、悩んでもいいんだよ。』(共著、小社刊)など。

 

 

 

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