予防接種、基本から

2019年10月25日

予防接種、基本から
保育士・「ワクチントーク全国」事務局長
青野典子

連載10 ロタワクチン、定期接種になるけれど

重篤な副反応に「腸重積症」
積み残しはあるものの、問題点は小さかったとして、現在任意接種であるロタウイルスワクチンの定期接種化が決まりました。準備期間を1年とって2020年10月スタートということです。
*第34回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(2019年9月26日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06937.html
第15回厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会(2019年10月2日)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192554.html
問題点のひとつは、ロタウイルスワクチン接種後に腸重積症が発症していることです。「予防接種後副反応疑い報告書」(2013年4月~2019年6月)では、約943万回接種のうち、重篤副反応報告は1051例、そのなかに328例の腸重積症の報告があります。
*第43回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(2019年9月20日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06845.html

ワクチンは2種類あり、商品名「ロタテック」(MSD2012年7月販売開始)は毎回2mlを3回経口接種、商品名「ロタリックス」(グラクソ・スミスクライン社2011年11月販売開始)は毎回1.5mlを2回経口接種。
『エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン』(監修:日本小児救急医学会、へるす出版)に、「口側腸管が肛門側腸管に引き込まれ、腸管壁が重なり合った状態を腸重積と称し、腸重積によって引き起こされる腸閉塞症を腸重積症と定義する」。発症年齢は、「1歳未満の乳児が半数以上を占め、3か月未満、6歳以上は少ない」と書いてあります。
初回接種を、生後2ヶ月から14週6日までに受けることがすすめられているのは、生後3ヶ月未満では、腸重積症がほとんど見られないためです。3ヶ月以降に腸重積症が増えていくので、ワクチンが原因ではないと思われる紛れこみが増えてしまうからできるだけ早期に接種ということになっています。
必ずしも重い病気ではないのに
2019年9月の「ワクチントーク全国」集会の講演で、山田真医師は「腸重積は減ってきている病気のひとつ」と語っています。また「ロタウイルス感染症は入院率が高いからといって必ずしも重い病気ということにならない。脱水にならないように丁寧な説明をすることにより入院も必要なかったりする」「いままでは、かかって症状の重いものにワクチンが開発された。いまはワクチンで予防できる病気はすべてということになってきた。予防接種を受けない人は、加害者とまでいわれることがある時代だが、かかるけど重症化しにくい病気まで予防接種が必要か」と問題提起しています。
ほとんど腸重積症の発症がない3ヶ月未満の子にワクチンを接種して、副反応としての腸重積症が発症していることをどう考えますか?
赤ちゃんの下痢の対処は大変ですが、ロタウイルスは、何回かかかって徐々に免疫ができ軽症になっていく、5歳までにほとんどの子が感染している、というウイルスです。

このワクチン、ほんとうに必要ですか?
審議会の議論のとりまとめでは「ロタウイルスワクチン接種後に腸重積症の発症率が増加するリスクを否定することはできないが、このリスクは大きいものではないと考えられた」としています。定期接種導入後一時的に報告が増えることも想定し、安全性に問題ないとしています。
*「ロタウイルスワクチンの技術的な課題に関する 議論のとりまとめ」
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000549449.pdf
ロタウイルス感染症の「副反応報告基準」も問題です。これはほかのワクチンも同じですが、「好発時期に合わせて設定するという考え方を基本として、若干の余裕を持たせて定める」こととしているそうです。表1にあるように、ロタリックス接種から腸重積症発症までの日数は、1回め接種および2回め接種後7日以内の報告が多く、ロタテック接種後は、1回め接種後7日以内の報告が多くなっています。審議会で、若干の余裕をもせたという報告基準を21日と決めましたが、22日以降の報告も83件あります。これを全部紛れこみというのは無理があると思います。

そのほかの問題点として、費用対効果が低いということも挙げられます。つまり、入院は多いけどほとんど脱水にならないための対処であり、治療にかかる経費よりロタウイルスワクチンを接種する経費のほうがはるかに高いということになっています。
また、経口生ワクチンのため、かつて生ポリオワクチンのときに起こったように、飲んだ子からまわりに感染するリスクもあります。ロタウイルス感染症の病気自体は軽いのであまり神経質にならず手洗いなど気をつけるようにとのことです。
ロタウイルスワクチンとその他のワクチンとの接種間隔は、従前の生ワクチンと同様の制限を設ける必要があるかということも議論されています。接種しようとしているワクチンの種類があまりにも多いため、接種間隔を守ることは難しくなってきているということでしょうか。「ほんとうに必要ですか? このワクチン!」と問いたいワクチンのひとつです。

※出典および参考資料のリンクはすべて、厚生労働省ホームページ。

※本連載は、次号より「ち・お」本誌にも掲載いたします。(編集部)

前回 連載9 みずぼうそう……ワクチン添付文書「重大な副反応」が改訂
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あおの・のりこ
1952年新潟県生まれ。保育士。予防接種についてみなで勉強し、 語りあい、行動する市民団体「ワクチントーク全国」事務局長。「ち・お」編集協力人。著書に、「ち・お」117号『予防接種は迷って、悩んでもいいんだよ。』(共著、小社刊)など。

 

 

 

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