予防接種、基本から

2019年7月18日

予防接種、基本から
保育士・「ワクチントーク全国」事務局長
青野典子

連載9 みずぼうそう……ワクチン添付文書「重大な副反応」が改訂

「無菌性髄膜炎」が追加
水痘(みずぼうそう)ワクチンは2014年10月1日より予防接種法の定期接種に入っています。対象年齢は、生後12ヶ月~36ヶ月(1歳の誕生日前日~3歳誕生日前日)、標準的接種年齢(おすすめ年齢)は、1回め生後12ヶ月~15ヶ月、2回めは1回めより6ヶ月~12ヶ月経過後です。
2018年11月、乾燥弱毒生水痘ワクチン添付文書の「重大な副反応」が改訂されました。
重大な副反応としては、これまで「アナフィラキシー」と「血小板減少性紫斑病」が記載されていましたが、今回、「無菌性髄膜炎」が追加され、以下のように記載されました。
無菌性髄膜炎:項部硬直、発熱、頭痛、悪心・嘔吐、意識混濁等があらわれることがある。異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
なお、本剤接種数年後にも、帯状疱疹に伴う無菌性髄膜炎があらわれた症例が報告されている。
(厚生労働省医薬・生活衛生局「医薬品・医療機器等安全性情報」№359 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000463321.pdf

症状が出るまでの期間は「定めがたい」
この文書の「症例の概要」によると、10歳未満の女児が1回めの接種6ヶ月後に2回め接種。接種3年半後に胸部と背部にチクチクした疼痛が出現。翌日、水疱が左上腕、左側胸部に出現、帯状疱疹と診断。3日後から嘔吐等出現、5日後に無菌性髄膜炎診断。12日後退院。19日後抗ウイルス剤の内服終了。症状発現7~9日後の痂疲(かさぶた)および水疱液からワクチン株由来水痘ウイルスDNAが検出されました。
無菌性髄膜炎の症状があらわれるまでの期間について、2019年1月16日の厚生労働省厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、資料17「水痘に対する定期接種後の副反応報告基準について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000469038.pdf)では、「当該ワクチンに関して、これまでに接種から症状発症までの期間が確認できた細菌性ではない髄膜炎の症例の内、接種から症状発症までの期間が最短のものは8日、最長のものは4205日(筆者注―約11年7ヶ月)(中略)であることから、報告すべき期間として、一定の期間は定めがたい」としています。
国は、ワクチンの安全性について管理・検討をおこなうために、想定される副反応をできるだけ統一的に類型化して、それに該当するものの報告を求める基準(副反応疑い報告基準)を定めています。
副反応検討部会では、水痘ワクチン定期接種後の無菌性髄膜炎について、「定期接種後の副反応報告基準(*1)に定める」「接種後予防接種との関連性が高いと医師が認める期間を報告対象とする」(同資料より)ことの是非について検討するとしました。
*1 「副反応報告基準」と「副反応疑い報告基準」は同じもの。もともと「予防接種後副反応報告」という名称だったが、2016年以降「予防接種後副反応疑い報告」となった。
帯状疱疹が併発
また、2019年4月24日の同部会、資料13「副反応疑い報告基準(水痘)について」 (https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000504814.pdf)では、「(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告されている水痘ワクチンの副作用報告のうち、無菌性髄膜炎が報告されているものについては、概ね全ての症例で帯状疱疹を併発している」こと、接種後に「野生株による帯状疱疹を併発した無菌性髄膜炎の症例は、多くはないと考えられる」ことを述べています。
つまり、定期接種後に無菌性髄膜炎が発症した場合、ほぼすべての例で帯状疱疹が併発しており、その多くはワクチンに由来すると考えられるということです。
接種後に、無菌性髄膜炎と帯状疱疹を併発した症例として次のようなものがあります。
2006年2月7日接種して2011年10月27日、5年8ヶ月後に発症。2005年7月28日接種して2017年1月31日、11年6ヶ月後に発症。2014年10月4日と2015年4月8日に接種して、2018年4月19日帯状疱疹、4月24日に無菌性髄膜炎、3年後に発症。2005年8月接種、2018年、12年以上たって発症。ほかに海外症例が紹介されています。
みずぼうそう(水痘)をひき起こす水痘帯状疱疹ウイルスに感染すると、ウイルスが神経に侵入し潜伏感染を起こし、免疫が低下したときに帯状疱疹を発症させることはよく知られています。帯状疱疹は痛みをともない出現する帯状の水疱疹が特徴で、帯状疱疹からまわりの人にうつることもあります。水痘ワクチンは生ワクチンで、軽く感染させて免疫をつくろうとしていますので、潜伏感染が起こっているということになります。

このように、ワクチン接種から水痘帯状疱疹ウイルスに感染し、まわりの人にうつす可能性もあります。近年はワクチン接種をしないことへの風当たりが強いですが、ワクチン接種して人にうつすことは問題ではなく、自然感染して人にうつしてしまうことは大問題になることに、疑問を感じます。
みずぼうそうにかかったことのある母親からは移行免疫があり、6ヶ月未満のこどもがかかったとしても軽症化効果が期待できるといわれています。ですが、近ごろではみずぼうそうにかかったことがなく、免疫をもたない母親が増えました。
こういういままでの「自然の免疫システム」ともいうべきものはなくなっていき、ワクチンの免疫を長くもたせるための追加接種が増えていくということになるのでしょう。実際に審議会では、水痘と同じワクチンを、帯状疱疹ワクチンとして定期接種導入することを検討しています。
健康なこどもでは、麻しんにくらべると疾患重症度は低いといわれているみずぼうそうですから、予防接種絶対といわれる社会風潮ですが、必要かどうか考えてみてください。

※参考資料
国立感染症研究所「水痘ワクチンに関するファクトシート」
https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000bx23-att/2r9852000000bxqx.pdf予防接種部会 ワクチン評価に関する小委員会 水痘ワクチン作業チーム「水痘ワクチン作業チーム報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000014wdd-att/2r98520000016rqn.pdf
※出典および参考資料のリンクはすべて、厚生労働省ホームページ。

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あおの・のりこ
1952年新潟県生まれ。保育士。予防接種についてみなで勉強し、 語りあい、行動する市民団体「ワクチントーク全国」事務局長。「ち・お」編集協力人。著書に、「ち・お」117号『予防接種は迷って、悩んでもいいんだよ。』(共著、小社刊)など。

 

 

 

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